日日是研鑽

shigemooによる自己啓発を中心とした書評を綴ったブログです。

数値化の限界

今回は,前回の続きである。

すなわち,引き続きウェーバーの官僚制について考察していく。

数値化の弊害

マックス・ウェーバーの官僚制の議論を踏襲した研究として,ジェリー・Z・ミュラーの「測りすぎーなぜパフォーマンス評価は失敗するのか?」がある。

これは,ウェーバーが官僚制の特徴として挙げた計算可能性について書かれたものである。

この本は,数値化による業績評価がもたらす弊害,マートンの言う「逆機能」に関する研究だ。

ミュラーは,官僚制化あるいは測定基準の専制の弊害が,ビジネスのみならず,様々な領域において生じていることを,豊富な先行研究と実例によって明らかにしている。

具体的には,どのような弊害が生じているのか。

まず,数値によって業績を評価している組織においては,人間は,数値で測定可能な目標だけに専念するようになり,数値では評価できない仕事はやらなくなってしまう。

また,時間軸を長めに設定すると,測定することが難しいので,人間は長期的な目標を目指さなくなる。

つまり,業績評価は,人を近視眼的にするのだ。

さらに,業績を数値で評価しようとすると,測定基準の作成など組織の本来の業務ではないことに多くの時間を割かないといけなくなるわけである。

つまり,結果として組織は非効率になる。

ここに,マートンの逆機能が見て取れる。

イノベーションの阻害

業績評価を数値で徹底されると,人間はリスクを冒して何かに挑戦することがなくなる。

結果が出ないことに関しては測定できないため,結果が出ないことをやった人間は評価されないからだ。

そうなると,イノベーションは起きようがなくなってしまう

つまり,リスクを冒して挑戦する気のない人ばかりが集まっている組織に,イノベーションが起きるわけがない,ということである。

そもそも業績評価とは,測定する業績がどういうものかがあらかじめ確立していないと,その基準を策定することができない。

しかし,本当のイノベーションとは,既存のものとはまったく異なる新しい業績を成し遂げることにある。

すなわち,イノベーションは数値化できないのだ。

換言すれば,数値化をしている限り,イノベーションは起こらないということである。

数値化は官僚制的

数値による評価の客観性,すなわち計算可能性を追求するのは,官僚制の特質である。

イノベーションを求める組織が数値化によって業績を評価し,官僚制化が進むことでイノベーションを阻害しているのである。

つまり,計算可能性の追求は官僚制化への第一歩なのだ

まとめ

  • 数値化はときに逆機能をもたらす
  • 業績評価は人を近視眼的にする
  • 数値化によって人はリスクを恐れ,イノベーションが起こらなくなる
  • 計算可能性を追求することによって,組織の官僚制化が進む